なあ、柴田

31 名無しのオプ :2010/09/19(日) 23:59:16 ID:fevmfRVx
ここは警察の取調室。刑事が容疑者の男を取り調べている。
佐藤刑事は煙草に火を付けると、大きく煙を吐き出し、正面に座っている男を残念そうに見つめた。
「なあ、柴田」佐藤刑事は腹立たしそうに煙草をもみ消すと男に話し掛けた。「お前には散々手を焼かされたな」
「勘弁してください」柴田と呼ばれた男は、終始うつむき加減で佐藤の前で縮こまっている。
佐藤は怒りを込めた眼差しで柴田を見ながら言葉を続けた。
「ケンカ、恐喝、破壊行為もあったな。その度に俺がどんなに苦労したことか。
お前の就職の世話をしてやったのも俺だった。忘れちまったわけではあるまい」
柴田は、速記係の警官が無表情にパソコンに供述調書を打ち込んでいるのをチラチラ見ながら、同じ言葉を繰り返した。
「ホントに勘弁してください、佐藤さん」
「これまでも俺は、お前には目をかけてやったつもりだ。それが今度は何だ、殺しだって？
おい柴田、お前俺に恥をかかせるつもりか？」
「い、いえ、恥をかかせるなんて、そんな・・・」
「しかも下着を盗もうとしたのを見られて女を殺したなんて最低な事件を・・・」

「さ、佐藤さん」
柴田はおずおずと顔を上げて言った。
「あなたは昔からそうでしたね。人の古傷を調子に乗って喋っているうちに、
言わなくてもいいことを言って墓穴を掘る」
「何が言いたいんだ、貴様」
「今度の女子大生殺しの動機は、捜査本部でもまだ掴んでいなかった。
なのに何故部外者のあなたが、下着ドロを見られたからなんて動機を明確に説明できるんですか？」
「そ、それは、お前・・・」
「その辺のところ、もう少し詳しくお話していただけませんかね。
佐藤さんに昔世話になったことは事実だし、感謝もしています。でも今はそれは関係ない。
僕はあなたを先輩刑事としてではなく、殺人事件の容疑者としてここにお招きしたんですから」
警視庁捜査一課柴田警部補は、穏やかな口調ながら鋭い眼差しで、佐藤容疑者を見据えた。

[2402] Posted by 名無しさん at 2010/10/05 21:20:56
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